「獲る漁業」から「育てる漁業」へのシフトチェンジで、注目される養殖業
クロマグロの漁獲制限がニュースで大きく報道されたように、水産資源の保護の意味からも、最近は「獲る漁業」から「育てる漁業」へのシフトチェンジが叫ばれています。
養殖業とは、海水または淡水でさまざまな水産物を卵や稚魚から大きくなるまで育て、販売します。牛、豚などの家畜ではあたりまえに行われていることを海水や淡水で行う、いわば海上の牧場のような事業です。日本ではなじみ深く、江戸時代には品川で海苔の養殖が始まったといわれています。
現在ではカキ、ほたて貝、ブリ、タイ、ハマチ、昆布、ワカメ、観賞魚などさまざまなものが養殖されています。近畿大学水産研究所によるクロマグロの完全養殖の成功は、大きなニュースになりました。その影響もあり日本ハムや双日などなど大手企業が養殖業に続々参入しています。
しかし、日本では水産業協同組合法によって、養殖場などの「海面使用権」は優先的に漁協に割り当てられています。いわゆる「漁業権」が必要になるため、勝手に生簀を作ったりすることはできません。
漁業権を取得するためには漁協(漁業協同組合)に入会しなければなりません。各地の漁協によってその条件は異なりますが、最終的に漁協の理事会などで審査が行われます。また入会するに当たっては規定の出資金も必要になります。
▲クロマグロの完全養殖は、「獲る漁業」から「育てる漁業」の象徴する出来事。
将来の独立を見据えて、地元の養殖業者に就職する
漁協の組合員になれたとしても、全くの初心者が養殖業を営むのは非常にリスクが高いことはいうまでもありません。
どんな魚介類を養殖するにしても、その成長に合わせて、エサを変え、時にはさまざまな栄養分を加えたり、あたえる量を調整したりしなければなりません。こうしたデータや技術は知識だけでなく経験がものをいいます。
資金に余裕があるならば経験豊富な人間を社員として雇い、経営者として働くという選択もありますが、代々養殖業を営んでいる人が多い業界なので、移住者をすぐに経営者として受け入れてくれるかは疑問です。
いずれ独立をするにしても、養殖の専門知識とともに、今後は販売ルートの開拓を含めた販売戦略がなければ、生き残りは困難です。そのためにも養殖場などに就職をして経験を積んで足場をつくっていくのが近道かもしれません。
生産量や出荷量が調整可能な養殖は、漁船で生計を立てる漁師より所得は安定しているといわれています。二世代先を見込んで本気で取り組んでみるのも悪い選択ではなさそうです。
▲各地の漁協の情報は「全国漁業協同組合」のHPでチェックできる。
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