◆モノ作りで田舎暮らし
田舎暮らしをするうえで、陶芸や木工、草木染め、炭焼き、家具職人などモノ作りを職業に選ぶ人も大勢いますが、それだけで食べていける人はほんの一握りに過ぎません。
例えば炭焼き。昔から燃料として用いられてきましたが、最近ではその浄水効果、消臭効果などが注目され、さまざまな分野で活用されています。なかでも和歌山県で伝統的に作られている備長炭は、非常に高値で取り引きされています。
多くの伝統職人と同じように、作り手である炭焼き職人の高齢化が進み、その数は減少傾向にあります。したがって、その生産量は早晩落ちるのは確実です。そこで新たにその世界に参入するというのも、田舎暮らしで生計を立てる手段としては有効といえます。
とはいえ移住してすぐに炭焼きで十分な生活費をかせげるほど甘い世界ではありません。炭焼き釜も必要ですし、炭焼き技術の習得も必須です。
炭焼きは北海道から九州まで全国的に行われており、なかには研修を実施している自治体や森林組合もあります。町おこし事業の一環として炭焼きに取り組んでいる自治体もあります。いきなり移住して炭焼きを始めるよりは、こうした機会を活用し、技術習得を図ったり人脈を築いたりするといいでしょう。
◆最大の課題は販路をどうするか
炭焼きにしても、陶芸にしても、家具職人にしても、持ち前の工房が必要になります。土地代が安くすむ田舎は、住居と工房をひとつの敷地内に建てることもでき、その点では田舎に居を構えるという選択は有益です。
ただし、ここで問題になるのは販路です。いくらいい炭を焼いても、いくら芸術的な陶器を焼いても、クオリティの高い家具を作っても販路がなければ売れません。インターネットを使って通販するという手段もありますが、いきなり売れるものではありません。もちろん商品の種類や数もある程度揃えなければ商売としては成り立ちません。
一口に商品といっても、商品の数だけがあればいいというものではありません。例えば炭焼きでも炭単品よりも、炭を材料にした「炭枕」や「炭クッション」、花や野菜、果物などを炭にした観賞用の「花炭」などがラインナップされていたほうが、買う側としては選択肢の幅が広がり利用しやすくなります。
また広報活動も重要です。 まずはサイト(SNS含む)を立ち上げるのはマストで、それ以後は定期的に都心で個展を開催したり、各種イベントに参加したり、新作が完成したときはマスコミにプレスリリースを配布し、雑誌などに取り上げてもらえるよう働きかけることも必要です。
いずれにしても数年間は、作品の研究や販路の開拓に時間を取られるので、収入はほとんど期待できません。十分な資金があればいいのですが、生活費をかせぐために始めたアルバイトが本業になってしまうケースもあるので、生活設計は慎重に立てるべきでしょう。
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